本展覧会のタイトルにある「EENT」という言葉は、「End Evening Nautical Twilight」の 直訳で「航海薄明」、いわゆる空が薄明るい・薄暗いタイミングを示しています。
築山は、この言葉をスナイパーが目視観測可能な限界の明るさ『こちらからは標的を認識できるが標的からはこちらを認識できないことで標的を狙う際の絶好のタイミング』として扱っている点に注目し、超望遠レンズを使用した風景写真とセルフポートレートで構成された新作を発表します。
村田は、近作において光学的な現象を取り込むことで複数の視界や異なるスケールの間を跳躍することを試みていました。今作では薄明の中で際が欠け、柔らかい光が回り込む中で、プリントに落ちる影やそこに写り込むイメージがどのような関係を結ぶのかを想像します。
高橋は、幼少期に捉えたある目線にまつわる作品を発表します。 乗馬した母親に抱かれながら見た朧げな阿蘇山の景色が、幼くまだ曖昧だった世界との間にもう一つの焦点を与えてくれたといいます。高橋はそれを自身の身体を再定義する馬の目線として考え、作品へと展開します。
このように3人の作家は視線をめぐる問題意識を持ち、それぞれが何か別の視線を投影し作品を制作するところで共通しています。 本展覧会ではそれらの視線を「航海薄明」の中に浮かび上がらせます。