interview with xiangyu

interview with xiangyu

2022.01.31

interview with xiangyu

#ARTIST TALK

Text&Edit_Akane Ono (POST-FAKE)

2022.01.31

interview with xiangyu

#ARTIST TALK

xiangyu中毒

いつものように近所のドトールでハニーカフェ・オレを飲みながら原稿を書いていると店内BGMから聞き馴染みのある曲が流れてきた。xiangyuの『ミラノサンドA』だ。2018年に活動を開始し、2019年5月にデビューEP『はじめての○○図鑑』をリリース。『風呂に入らず寝ちまった』『ひじのビリビリ』や『餃子』などユニークな題名(楽曲)が印象的だが、彼女が作るどの曲にも共通するのは人に寄り添いどんな生き方も肯定するパワーがあることだ。現在は音楽活動だけに留まらず俳優としても活躍し表現の幅を広め続けている。これからの自分が楽しみだと語る彼女は今何をみて何を感じているのだろうか。そしてこれからどんな表現をしていくのだろうか。日々、自身と向き合い悩みながらもアーティストとしての新境地を切り開こうとしているxiangyuに話を伺った。

ー 『ミラノサンドA』がドトールの公式BGMになったと伺いました。おめでとうございます。このユニークなミュージックビデオはどのように生み出されたのですか?

シャンユー:MVは松田瑞季ちゃんってカメラマンの子がディレクターとなり制作しました。ある日インスタグラムみていたら、Google Earthに写り込んでいる人をピックアップしてストリートスナップみたいな感じで投稿しているgoogle earth fashionって面白いアカウントたまたま見つけて。そのアカウントを運営している松田さんと何か一緒に制作できないかと思い直ぐにDMを送りました。その時に『ミラノサンドA』の曲を聴いてもらったら凄く気に入ってくれて、彼女の発想の中にあるGoogleを上手く使ってMVを作れないかと相談し合いました。コロナ渦で日本全国のドトールを回ることは厳しいけれどGoogleだったらお店に入るところまで行けるから一回やってみようかとなって、彼女が全国1000店舗以上あるドトールを全部リストアップしてGoogleで回ってくれました。そんな感じで作品が出来上がりました。

 

ー 他のミュージックビデオもすごく個性的で素敵ですが、それもxiangyuさん自身が一緒に制作したいと思ったクリエイターさんに声をかけたりしているんですか?

シャンユー:そのパターンもありますしマネージャーの福永さんは映像も撮れるので、撮ってくれる場合もあります。いくつかあるんですけど最近で言うと『マンホール』のMVはそうです。映像も撮れるって凄いですよね。

福永マネージャー:出来ないことはとりあえずやってみようって精神で(笑)。

ー 楽曲はどんな手順で制作されるんですか?

シャンユー:トラックメーカーの方からトラックをもらってからのスタートするのがほとんどで、その中で一緒に作る人と曲の構成を考えてキャッチボールをとりながら作っている感じですね。歌詞はトラックをもらってから考える事が多いです。凄く歌詞が書ける時と書けない時と波が常にあって。その時々の私がすごく反応している言葉やモノがいくつかあるんですが、歌詞を書く際の最初に自分の中のその引き出しとトラックをどうやって合わせようか考える作業をします。それが上手くはまらない時に自分の引き出しをまた増やす作業をして、それからまたもう1回どうしたらトラックと自分の持ち味を足してより良く表現できるかを考えます。どれとどれを合わせるかのステップに1番時間がかかるので、それが超えられればなんとかなる感じはありますね。

 

ー その引き出しを増やす作業は具体的にどんなことをするんですか?

シャンユー:めちゃくちゃ遊びに行きます。遊びに行くのは単純にクラブに行ったりライブハウスに何かを観に行ったりするだけではなくて。登山をしてキノコを刈ったりすることも趣味の一つなので山に行ったりする時間を作ったりしています。自分の気持ちが動く場所に行ったりモノをみたりする時間が私の中では引き出しを増やすことにつながります。だから日常的にに本を読んだり映画や展示を観に行ったりはしているんですけど、バランスは大切にしています。観に行きすぎていたら一瞬休んだりとか、ぼーっとする時間がなかったなと思ったら別に何をするわけでもなくゆっくりする時間を作ったりとか、人に会い過ぎていたら会わなくするとか、逆に会わなさ過ぎたら人にいっぱい会えるところに行くとか。そんなバランスの取り方をして自分の中で「あ、なんかうまれそう」みたいなスイッチを入れるようにしています。

 

ー ご自身の分析がすごく上手ですね。

シャンユー:全然そんなことなくて、むしろ自分自身のことが全ての中で1番分からない生き物だと思っています。表現することを自分の人生の中でメインにしてから、何故こんなに気持ちがささくれ立っているのか何で喜びを感じているのかとか、自分のことなのにどの方向に気持ちが向いていて何を求めているのかが分からない瞬間が多くなって。ただ他の人のことはコントロール出来ないけれど自分自身のことは唯一コントロール出来るからちゃんと管理してあげたいと思っていて、自分としっかり向き合うことを意識しています。

ー 先ほど日常的に本を読むとおっしゃっていましたが、愛読書を教えていただくことはできますか?

シャンユー:今ハマっていて持ち歩いているのは現代川柳の本と、短歌の本です。川柳や短歌って古文漢文みたいに授業のような固い印象を受けるので今まで興味がありませんでした。でもこの2冊がそのイメージをブチ壊してくれました。右の「アーのようなカー」はタイトルから入りました。日常生活の中のいろいろなモチーフを短歌として詠んでいて、その情景が鮮明に見えるのですごく共感出来ます。解像度が高く、分かりやすい短歌で読み物としてすごく面白くて。もう一つの現代川柳の本は装丁にすごく惹かれました。今まで川柳は若い人向けではないと思ってしまっていましたがこの本を読んで川柳ってこんなに自由なんだなと気付くことが出来ました。これは何のことについて言っているんだろうと考えながらその言葉を追っていくのがすごく面白くて。私も言葉を使って表現をしているのでトレーニング的にもなるし、この2冊はいつも持ち歩いて読んでいます。好きな表現のところに付箋をつけていったらすごい数になりました(笑)。

ー 音楽活動以外に俳優としても活躍されていますが自分じゃない人を演じるのはどんな感じですか?

シャンユー:普段の自分だったら感じない視点にたくさん気付くことが出来てすごく面白いです。映画『スパゲティ・コードラブ』は死について凄く考えている女子高生の役で。私は普段こんなに死について考えたりするかなとか、一つのことに対してそんなにのめり込むかなと凄く考えました。その向き合いが面白かったです。たまに役のことを思い出して考えていたら、もし自分がこの人だったらもっとこの本を読んでいたかもしれないなとかこんな映画も観ていたのかもしれないなとか思ったり。役を与えてもらって違う視点を持たなかったら考えなかったことなので、そんな考えがだんだん増えていくことが興味深いです。

 

ー 今演じてみたいのはどんな役ですか?

シャンユー:どんな役でもご縁がある役は是非と思っています。私は出来るだけ多くのことを知ってから死にたいなと考えているので、役でもそうですし普段ライフワークとしていろいろな場所に出かけるのも本を読むのが好きなのも自分が知らないことを知れるきっかけになるからなんです。その方が自分の人生が豊かになるし、新しい知識を得ることは自分を守る術にもなるし成長させてくれると思います。だからいろいろな役を演じてみたいです。

ー 出演されていた映画『スパゲティ・コードラブ』は「東京の街で愛を模索し生きる若者たちの日常の物語」とのことですがxiangyuさんにとって「東京」や「愛」はどんな意味合いがありますか?

シャンユー:東京は全然休まらない街ですね。私は休まないようにここにいる。自分が追ったり探したりしなくてもどんどん新しいものが更新されているから、自分が停滞していると気が付いた時にこのままじゃまずいなって思わせてくれる。表現活動をする上で誰からも求められていないし言われていないことをやり続けることが重要だと考えているんですが、それの逆を言えばどれだけでも怠けられるんです。だけど自分がちゃんと意思を持って動き続けること、行動を起こすことが大切だと思わせてくれるのが東京だと思います。

 

ー「愛」に関してはいかがでしょうか?

シャンユー:愛ってワードを聞いたときに自分から他者への愛を多くの人は想像するかもしれないけど、私が1番重きを置いているのは自分自身への愛。自分を大事に思うことが全ての愛の始まりで最も重要なことかなと思っていて。どんな側面を持った自分のことも受け入れることが自分を愛することに繋がると思うんですけど、凄く難しいですよね。私はそれがとても苦手で。そんなことしなくて良いのに誰かと比べて落ち込んだり、理想の自分になれていない事に悲しくなったり。でもそうではなくて今の自分を受け入れて愛して、これからの自分自身の人生を楽しみにしたい。そういう自分になれたときに今よりもっと他の人とか生き物とか受け入れられるものが増えるだろうし、さらに素敵な自分になれるだろうから。そういう意味で愛が全てですね。

 

ー 自分を愛すことで他者も愛せるようになりますよね。今日お話を伺ってセルフケアがxiangyuさんの中で大切なキーワードなのかなと感じました。

シャンユー:そうかも!他のインタビューでは話していないけれど、実は15年間くらい自律神経の薬を飲んでいるんです。10歳くらいの時に小学校の中の狭い社会と自分自身の関わりが上手くもてなくて学校に行けない時期がずっと続いて。そこからメンタルケアの先生にお世話になって薬を飲むことをずっと続けてきています。社会と自分自身がどう関わっていけば良いかが分からないと思いながら青春時代を過ごし大人になりました。だからこそ私と同じように思っている人達がどうしたらもっと気持ちが楽に生きていけるんだろうって常に考えながら表現活動をしているので、私からはそのキーワードが強く出ているのかなって思います。

ー xiangyuさんの活動でどんな形であれ救われる人はきっとたくさんいると思います。では今後の活動の展望を教えてください。

私は凄く2022年が楽しみで。ていうのも自分の制作の上での引き出しを増やす作業の時に、自分の思うように動いてバランスを保っていたのですがコロナ禍でそうもいかなくなって。全てのバランスを思うように取り続けるのがすごく難しくなって、それに伴い制作がうまくいかなくなってしまって。その中でも何曲かはリリースしたんですけど、まだトンネルに入ったり抜けたりが多くて。でも今ようやく出れそうな兆しが見えてきた感じがあるんです。だからそれを抜けた先の自分は何を世の中に出すかがすごく今は楽しみ。音楽を軸に表現活動をしてきて3年経ったんですけど、今までと全然違うようなものができるような気がするし、脱皮できるような気がする。その先に私は何を思うのかなと自分自身への興味がすごく湧いています。こうなりたいというよりは、xiangyuって人はどんな人生を歩んでいくんだろうってワクワクしています。

 

ー 12月にリリースされた最新曲について教えていただいてもよろしいですか?

私が書いているエッセイが脚本となった映画の主題歌の『LIFE』という曲です。映画自体がいろいろな人の人生観をテーマにしている映画なので、どんな場所でどんな生き方をしても全部OKという全ての生き方を肯定するような曲を作りました。

 

ー 本日はありがとうございました。最後にxiangyuさんにとって本物のアーティストとはどんな人ですか?

誰からも見えないところであっても自分の思う面白いことを追い続けている人かな。

 

PROFILE

xiangyu

Musician/Actor

2018年9月から活動開始。 読み方はシャンユー。 名前は本名が由来となっている。2018年10月に初のデジタルシングル「プーパッポンカリー」。2019年5月、初のEP『はじめての○○図鑑』をリリース。南アフリカの新世代ハウスミュージック、GQOM(ゴム)のエスニックなビートと等身大のリリックをベースにした楽曲で関東を中心に勢力的にライブ活動を行なっている。また、音楽だけでなくアート活動や社会貢献活動など社会に対して様々なカタチでアプローチし続けている。

Web xiangyu0322.tumblr.com
IG @xiangyu_dayo