interview with So Mitsuya
【PART2】FASHION ≒ ART

interview with So Mitsuya
【PART2】FASHION ≒ ART

2021.12.31

interview with So Mitsuya
【PART2】FASHION ≒ ART

#ARTIST TALK

Interview_Sohei Oshiro (POST-FAKE)
Text&Edit_Akane Ono (POST-FAKE)

2021.12.31

interview with So Mitsuya
【PART2】FASHION ≒ ART

#ARTIST TALK

ファッション写真の現在地

ファッション業界からも多くのラブコール受けるアーティスト、三ツ谷想。
彼はファッションメディアに蔓延る問題をどう考えるのだろうか。

ー 「フォトグラファー」や「アーティスト」という肩書きって気にしていますか?

自分がどう思われたいかはどうでも良いですね。むしろどちらかに縛らないと評価や理解をしてもらえない状況が好きじゃなくて。なんとなく「僕はどっちでもないよ」って態度を示しています。コマーシャルな受け仕事でも自分自身のプロジェクトでも作る時の感覚は似ていて、僕の中では全部同じアプローチをしています。違いは評価のされるポイントと制作期間が決められていること。でも「普段の感じでお願いします」と依頼が来るので本来長く時間をかけて作れる作品の再現を短い時間でしなくてはいけない。自分が普段どのように時間をかけて作品を作っているのかを分析して、完成した地点から逆算して自分の色を出しつつ、期限に間に合うように何度もトレーニングをする。それを何回も繰り返していくうちに、コマーシャルの仕事でも自分のスタイルを確立出来る様になってきました。

 

ー 難しいですよね肩書きって。同じ写真を撮る人なのに、フォトグラファー、ファッション・フォトグラファー、写真家、アーティスト、カメラマンってニュアンスが違いますもんね。

日本だとそれぞれの役割が分かれているからそれぞれ言葉ができてしまったというか。とても日本的ですよね。それぞれの肩書きでどんな人物像なのか思い浮かべますからね。僕の中でも同じ職種として認めたくない人たちもいることも事実で。この人らと一緒にされるくらいなら、僕はまた別の肩書きを探す必要があるなと思うことはあります。まあでも結局は世間のカテゴライズなんで気にせず自分がどうありたいかに集中すべきだと思いますけど。

ー ファッション媒体って写真家をひたすら消費しているきらいがあると思っていて。ひたすら持ち上げて擦りに擦って飽きたらポイというか。そこに対する不安や不信感みたいなものはないですか?

それはないですね。むしろ消費されるのがわかっているので、それを逆手にとっています。どういうことかというと、一度ファッション媒体で使用した写真をまた自分のパーソナルな作品に落とし込むことによってあえて自己循環させているんです。その例として、全部でコマーシャルワークで使用した写真を素材として再利用した「SCENARIO OF REPRINT」という作品集を作りました。『IMA』のVol.35に付録として別刷りで入っているので良かったら見てみてください。こんな感じで消費が前提で作った作品を自分の糧にさせてもらっています。

 

ー すごく良いアプローチですね。

最初はコマーシャルワークをやる度に確かに自分がどこか擦り減っていくのを感じていて。そうならないように上手くパーソナルワークと循環させることで自分の中で一連の流れを作りたくて。この写真集はそのアプローチで作ってみた第一号です。ファッション媒体で使った写真って全部photoshopにデータが残っているのでいくらでも解体できるんですよね。解体すればする程、僕がパソコン上で加工した痕跡が立ち現れてきて、本来見せたくなかった部分が見えてくるんです。だからこそ、今回初めてあえて嘘だと分からせるようなアプローチをしました。一度納品してファッション媒体を通して世の中に発表された作品をバラして再構築することで、今後は自分自身の作品としてまた別の文脈で発表したということですね。

 

ー リアルなのかフェイクなのかわからないギリギリを表現するのが三ツ谷君の作風だったのに、なぜ今回はあえて嘘だとわかるアプローチにしたんですか?

もちろん作品として循環させたいというのもありましたし、それにだんだん加工が上手くなってしまって。みんな当たり前のように現実のことだと認識しちゃっているのが面白くないなと感じてきていました。嘘があまりにもうまくなっちゃってみんな信じるから一度ネタバラシしたくなってきたという心境です(笑)。ちゃんと加工している虚構の世界なんだと勇気を出して示してみようと。いったんネタバラシすることによって、作家としても次のステージに進めるのかなとも思って。これからファッション写真の方はよりリアルに見えるように作って、その答え合わせ的なものを自身の作品の方でやっていこうかなと悩み中です。

例えばこの作品だと、1枚目は『GINZA』で発表した〈BALENCIAGA〉のファッション・フォトです。僕はいつも自分でモデルに影をつけているのですが、その影だけを抜き出したものを自身の作品集では発表しました。右の写真はもともとバッグが置いてあるファッション・フォトなんですが、そのバッグを想定した黄色いフレームを用いてどう影が付くかと試した段階を自身の作品にしました。

元ネタをグリッド(2枚目右)に乗せて示している作品です。このグリッドに乗っている石だけで空間を作りました。石を配置して何箇所も引き伸ばして作っています。

ファッション・フォトの新しいアプローチはもうないのか

ー 時代が進むほど様々なアプローチが蓄積されていきます。昨年亡くなってしまったヘアメイクアーティストの加茂克也さんが以前「ファッション・フォトのアプローチって90年代に全部出切っちゃっていると思うんだよね。この20年間新しいことをやっているって思った現場ないもん」と言っていて。それからファッション写真ってどうなっていくんだろうと常に考えているんですけど、三ツ谷君はまだアプローチの仕方はたくさんあると思いますか?

正直なところ、真新しい表現を生み出すのはしんどくなっていると思います。僕のやり方も日本ではまだ目新しいのかもしれないけど、世界的には作品でもファッションフォトでもコラージュの手法でやっている人は既にたくさんいるので、僕自身まだまだ新しいアプローチは出来ていないと思います。とりわけ日本国内のファッションフォトにいたっては模倣が目立ち、オリジナリティを確立しようとする人自体が少ない状況なのかなと思いますが、僕は新しい表現方法を模索しながら、更新する側になりたいと思っています。難しいことだと思いますが。

 

ー そうですよね、すごく難しいことだと思います。

コラージュという手法だけでは甘いと思ってます。先ほど言った通りコラージュの手法を使ったアーティストは既に海外にもたくさんいるから、プラスアルファの何かがないといけないと思います。でもそれと同時に、難しいことを気にせず、自分の欲求に従って身体的に楽めているかをまず最優先するべきだとも思っていて。もちろん現代写真論には興味はあるしいろんなアプローチやコンセプトがあることは理解しているし、あまりかっこつかないかもしれないけれど、僕も基本的にはphotoshopで遊んでいるだけなので。よくこんなのでギャラリーに所属させてもらったりしているなとは思いますが(笑)。

 

ー 大事ですね。アートとや現代写真って結局コンセプトや文脈の話になってくるけど、そもそもアーティスト自身が楽しく製作できるに越したことはないですよね。自信が楽しんで作った作品は、他者にどう思われているか考えることはありますか?

僕が自然にやっていることが、もしかしたら現代に重要な疑問を投げかけているんじゃないかな。そもそも現実ってどこまでが現実なんだろうって。角度も影もよく見たらおかしいのに、みんな表層的に捉えて本質まで考えないし疑わない。みんなちゃんと現実を見ていないのかもしれない。今自分が見ているスマホやパソコンにある影がおかしいかもしれないのに、そんなのは注意していない。僕自体は現代写真の文脈でどうこうっていう欲求があまりなくて、photoshopで馬鹿なことやっているのが最高ですけど、これからは僕の写真が世の中にどんなアプローチができるかというのもちょっと意識してみたいですね。

ーーー最後に今新たに挑戦していることがあれば教えてもらっても良いですか?

最近までは撮影したいろんな素材の一部を組み合わせて新しい作品を作ったりしていたんですけど、それに飽きてきて。もっとやばい場所の素材で何かしたいと思ってた時にメトロポリタン美術館(www.metmuseum.org)がパブリックドメイン(一般公開)しているのを見つけたんです。それを使って作品作りをしています。よくわからない広場とかエジプトの景色の画像なんが高画質でたくさんあるんです。次に作る作品はパブリックドメインのみでやろうと思っています。要するに自分で撮った写真が一枚もない状態。自分の写真や単なる欲求だけで続けていっても良いですけど、その中で今後アーティストとして次の段階に進む欲求ももちろんあって。試してみる価値はあるのかなと。あとは自分が手掛けたコラージュ作品を立体作品にしてみようと思っています。photoshopでコピーしたり拡大して引き伸ばしたり、組み合わせたりしていることを全て立体のインスタレーションでやってみたいなと思ってますね。

METによるパブリックドメイン画像を背景に使用した写真

PROFILE

So Mitsuya

Artist/Photographer

京都府生まれ。IMA gallery所属。2018年、JAPAN PHOTO AWARDシャーロット・コットン賞、デヴィット・トロ(DIS)賞を同時受賞。2019年、LUMIX MEETS BEYOND 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS #7に選出、主なグループ展にUNSEEN Amsterdam(Gashouders, Amsterdam/2019)、Photo Saint-Germain(Galerie Nicolas Deman, Paris/2019)など。2021年、出版レーベルRONDADEより写真集「VISITORS」を出版。

Web www.somitsuya.com
IG @somitsuya