interview with So Mitsuya 【PART1】

interview with So Mitsuya 【PART1】

2021.12.21

interview with So Mitsuya 【PART1】

#ARTIST TALK

Interview_Sohei Oshiro (POST-FAKE)
Text&Edit_Akane Ono (POST-FAKE)

2021.12.21

interview with So Mitsuya 【PART1】

#ARTIST TALK

世界を欺く写真

私たちが見ているのは現実なのか?それとも彼によって作られた虚構なのか?アーティスト三ツ谷想を紐解く。

「自分が作り上げた世界をみんなが現実だと思っている姿に興奮している」

ー コラージュをしようと思ったきっかけを聞かせてください。

もともとストレートな写真を撮っていたんです。写真を始めたばかりの頃ってみんなわかりやすいユーモアを求めて撮るんですよ。僕も同じで街中で赤瀬川原平さんのトマソン的な被写体を追い求めていました。その後は森山大道さんみたいなスタイルでも撮っていたりして。でもある時にそれだと弱い写真ばかり撮れてしまうと気付いたんです。一枚で説明がつく強い作品を作らないと誰の脳裏にも残らないなと思い、フィルムで撮った写真をスキャンしてデータ化したものをいじってみたのがそもそもの始まりです。はじめからコラージュ作品を作ろうと思ったわけではなく、自分の写真をより良く見せようと思った結果がたまたまコラージュ作品になったんです。

 

ー そこからどのようにして今のスタイルになったんですか?

最初の作品はテレビに手をコラージュした作品(untitled,2015年作)で( www.instagram.com/p/x_pjI9I-Yq/ )。それをTumblrでみたロンドンの写真メディアから連絡が来て、自分の制作に少し自信が付いてからは沢山コラージュするようになりました。ずっとフィルムで撮っているとお金がかかるのでデジタルに移行をしたりして模索をしながら。はじめてコラージュをまとめた作品集『What I See』で「JAPAN PHOTO AWARD」を受賞してからは、以前より多くの人にみてもらえるようなりました。それに伴って作品に対しての解説が必要になり、だんだん自分やっていることを意識するようになっていくと共に、いつの間にかコラージュという手法が当たり前になリました。そうしているとファッション撮影などコマーシャルワークも来るようになって。自身の作品の応用でモデル以外の部分を変えたら面白いと思ったら、それがうまくハマりましたね。

 

ー コラージュ作品って一生いじれるじゃないですか。何をもって完成したといえるんですか?

自分の中であまりブレることのない、ぼんやりとしたゴール地点があるんです。だからそのゴール地点までいければ完成です。一度完成すると完全に満足するから次の日にそれを見てもやっぱり違うなんてことにはならない。サイズ一つにしても、もっと細かな部分にしても一つひとつのグルーヴがあって、それがピタッとハマる瞬間があるんです。たった数時間で完成したり、反対にものすごく時間がかかったりするので作品によって制作時間は全然違います。でも自分が納得する作品はすごく短い時間で出来ることが多いですね。

ー 自身のプロジェクトや作品のコンセプトってどうやって決めているんですか?

基本的にはすべて妄想から始まっています。ベースとなる一枚の写真を眺めながら自分の想像を膨らませ、面白いと思う完成形が見えたらそれに近づけていく。今後は最初にテーマやコンセプトをきちんと据えたコラージュ作品も作っていきたいんですけど、今の段階では自分が妄想したことをリアルに表現するだけですね。その過程は夢を見るプロセスと近い気がしています。夢って結局自分が見てきたものを組み合わせて出来ていると思っていて。めちゃくちゃ自由でぶっ飛んでいる夢みたいに、妄想して一度既存の風景をバラバラにしてから再構築することで全然違う風景を作るのが僕の作品の特徴です。

 

ー 制作過程において重要視していることは?

僕にとって大事なのはシャッターを切る瞬間ではなくその後です。写真を撮るときは素材集めでしかなくて、音楽におけるサンプリングのような感じです。撮ること自体にはあまり興味がないんですよ。だから素材集めは緊張しなくて良い。とにかく自分が興味のあるものをなんとなく撮れば良いので。ファッションの撮影も、モデル1ルックつき3分くらいで撮れてしまいます。モデルの部分を後から切り抜くから、場所だって天候だって関係ない。このスタイルって、ファッション・フォトと凄く相性が良いなと思って。これからもっとスタンダードになっていくのかなと。こういう事を踏まえると、僕の作品をこれまでの写真論的に当てはめることは難しいと思っています。ただただ写真そのものの特徴にクローズアップしていくだけなので。

ー 三ツ谷君の作品はほぼすべて縦位置だと思うんですけど、横位置だとアプローチが難しかったりするんですか?

単に癖ですね。自然に縦位置で考えています。それに現代写真というものは縦位置が主流になっているのかもしれません。おそらくですけど、スマホのフォーマットが縦で毎日持つものだしみんなが見慣れている。そのせいでなんとなく横位置の写真は少し古臭く見えてしまうんだと思います。グラフィック的な感覚ですけど。僕は縦位置で比率は3×4がイメージのバランスを取りやすいので全部そうしています。

 

ー カメラの機材や設定にこだわりはありますか?

いくら後からコラージュするからといってなんでも良いわけではなくて、素材となる写真のクオリティは担保されてなくてはいけないと思っています。特に背景となる素材には気を付けていて、基本的にすべて同じ光量でフラッシュを焚いています。今まで撮りためている膨大な量の素材写真は全部同じ設定で撮っているんです。そうすることで様々な写真を組み合わせた時も不自然にならない。フラッシュの光は強くしていて、昼間の直射日光でない限り大体フラッシュの光が勝つので、同じテンションの写真に仕上がります。あ、あと最近やっとペンタブを使うようになりました。

 

ー え!逆に今までずっとカーソルで作業していたってことですか?

そうですね(笑)。元々MacBook Proでずっと制作をしていていたので、キーボードとドラッグパットがあれば制作が出来た名残でずっとiMacで制作していました。でも最近周りの友達にペンタブでやった方が楽だよと薦められてやってみたら、1週間に2日余裕が出来るくらいめちゃくちゃ楽で。僕は今まで何やっていたんだという気持ちになりました(笑)

 

ー 写真そのものの特徴というのは?

本来写真というメディアは透明性があって、何かを写したものでしかないという事です。時代が進んでphotoshopなどの編集ツールが誕生して、写真を撮った後に介入できるようになったじゃないですか。もともとポストプロダクションの機能って編集の後を残さず写真を綺麗に見せるためだったんですけど、現代写真の文脈から考えると違うアプローチをしている。例えばLucas Blalock (ルーカス・ブレイロック)はあえてphotoshopなどツールの痕跡をアートにしたし、Asger Carlsen (アスガー・カールセン)の場合は身体性みたいに本来削れないものを加工することで、明らかに加工されているものだと思わせた。僕も撮った後からたくさん編集している点では彼らと同じですね。ただ僕の場合はめちゃくちゃコラージュしている感を出していなくて、本当の写真に見えるギリギリのところで留まっている。これはもしかしたら性癖みたいなもので、自分が作り上げた世界をみんなが現実だと思って見ている姿に興奮しているのかもしれません。

 

ー なるほど、だからあえてわかりやすくコラージュしている感を出さないんですね。

そうなんです、常に「いくらでも騙せるぞ」っていう状態にいることが大事で。それがなぜ出来るのかというとやはり写真というメディアを使っているからなんです。「写真だから現実を写しているはずだ」という思い込みがみんなの中にまだギリギリあって。写真を編集出来るということは周知の事実なはずなのに、みんなどこかでその元となる被写体や風景は現実のものだと錯覚しているというか。今はそれを逆手に取ってコラージュした虚構の世界を現実(リアル)だと信じ込ませることにハマってしまっています。写真の真実性に媚びて嘘をつきまくることが僕の美意識なのかもしれません。もっと嘘らしくコラージュすることで非現実感を出し、Carlsenのようにアートとして写真そのものの性質を変容していく方法もあるんだろうけど、僕はそこにあまり興味がない。例えばコラージュする場所にしても宇宙の背景はあまり使いたくない。そうなると世の中の人々が嘘だって分かるから。そうなると急に萎えてしまうんですよね。

 

【PART2】へ続く

PROFILE

So Mitsuya

Artist/Photographer

京都府生まれ。IMA gallery所属。2018年、JAPAN PHOTO AWARDシャーロット・コットン賞、デヴィット・トロ(DIS)賞を同時受賞。2019年、LUMIX MEETS BEYOND 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS #7に選出、主なグループ展にUNSEEN Amsterdam(Gashouders, Amsterdam/2019)、Photo Saint-Germain(Galerie Nicolas Deman, Paris/2019)など。2021年、出版レーベルRONDADEより写真集「VISITORS」を出版。

Web www.somitsuya.com
IG @somitsuya